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「エネルギーの主流は再エネ」が世界の常識 エネルギーで地域を豊かにする方法を探る
日本は、2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言。「環境」「脱炭素」はもちろん、世界的には「産業」「エネルギーセキュリティ」の面でも、今やエネルギーの主流の一つになりつつあるのが再生可能エネルギーだ。
欧米での供給割合を見ると、デンマークは8割以上、ドイツは4割以上、その他3割を超える国も多く、中国やインドでも再エネ事業は大規模な投資先として発展を遂げている。一方日本では、未だ火力発電が電力量の7割を占め、再エネの割合は2割程度と遅れをとっている。今回は、地域で再生可能エネルギーを増やす活動を続ける山下紀明さんにインタビュー。地域主導の再生可能エネルギー事業の可能性や再エネの新しいビジネスモデルなど、最新の再エネ事情をお聞きした。
山下 紀明
山下 紀明
環境エネルギー政策研究所(ISEP)主任研究員
京都大学経済学研究科非常勤講師

欧米で進む再エネ事業。中国やインドも躍進

まず、再生可能エネルギーの取り組みについて。環境先進国などの主要国の現状からお伺いしても良いですか?

山下紀明さん

世界各国で再エネの導入が拡大しており、ここ5、6年の投資額を見ると、エネルギー全体の中でも一番多くなっています。欧州での再生可能エネルギーの供給割合を見ると、デンマークの80%以上を筆頭に、ドイツでは40%、スペインも40%です。 一方、アメリカや中国でも成長しており、アメリカではカリフォルニア州の太陽光、テキサス州の風力が有名。国が産業として推進する中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進み、風力・太陽光メーカーの世界トップ10の半分以上は中国企業。国土が広く、導入量が大量なので強いですね。インドでも風力中心に導入が進んでいる状況です。

日本では「再エネはコストがかかる」というイメージがまだありますが、世界的には再エネ=一番安い電源という国も増えています。中国では太陽光、アメリカとインドでは風力が一番安い。再エネ事業は、環境のため、というよりは産業・投資先としての側面が強くなり、毎年開催されているCOP(気候変動枠組条約締約国会議)でも、現在は金融関係の参加者も多い。1997年の京都議定書の頃に比べると、だいぶプレイヤーが変わってきたなと実感しています。

再エネの主流はやはり風力でしょうか。

風力発電

今までは風力の導入量が大きかったのですが、昨年太陽光が風力を抜きました。ただ、風力発電は1年間のうち設備利用率(発電設備の実際の発電量が仮にフル稼働していた際の発電量の何パーセントほどであるのかを示す数値)が20〜25%程度、太陽光は10〜12%程度発電するので、発電量としては風力の方がまだまだ多いです。また、原子力は1年間で80〜90%分発電するため発電規模に対する発電量は大きいのですが、原子力発電を持てる国は限られているので、世界的な導入量で見ると、太陽光発電と風力発電合計の1/4程度、発電量も昨年ついに再エネの方が多くなりました。再エネがいよいよ本格化、有力な電源の1つになった形です。

世界的に見て、原子力への依存度がそんなに低いなんて、驚きました。

パソコンやスマホなどと同様、小型でコスト等が小さい方が生産台数を増やしやすく、生産台数が増えるとコストが減るという好循環が起きやすいですよね。エネルギー業界でも、導入コストや規模などが大きい原子力より、小さい太陽光や風力の方が数を増やしやすく、急成長しているのが現状です。先ほども少し出てきましたが、再エネ産業での注目が集まるのは、中国。資源も技術も持っているので、太陽光に力を入れる中国の勢いに注目が集まっています。日本の再エネ事業も、産業政策としてもう一度考える時期に来ています。

一面に広がる太陽光発電機

そう考えると、日本は再エネ事業に遅れをとっているイメージです。

日本全体の電源構成(2022年速報)
(出所:日本全体の電源構成(2022年速報) :電力調査統計などよりISEP作成)

2022年日本でのエネルギーの発電電力量の割合は、火力が72.5%でダントツトップ、原子力が4.8%、再エネの割合が22.7%と1/5を超えてきています。その内訳として一番多いのが、太陽光9.9%で原子力の2倍、水力7.1%、風力は0.9%にとどまります。日本の再エネといえば、昔はほとんどがダムなどの大型水力で10%程度でした。現在では太陽光がそれを抜き、再エネ全体の割合は10年前より倍増したことになります。

日本全体の電源構成(2022年速報)
(出所:日本全体の電源構成(2022年速報) :電力調査統計などよりISEP作成)

2022年日本でのエネルギーの発電電力量の割合は、火力が72.5%でダントツトップ、原子力が4.8%、再エネの割合が22.7%と1/5を超えてきています。その内訳として一番多いのが、太陽光9.9%で原子力の2倍、水力7.1%、風力は0.9%にとどまります。日本の再エネといえば、昔はほとんどがダムなどの大型水力で10%程度でした。現在では太陽光がそれを抜き、再エネ全体の割合は10年前より倍増したことになります。

日本は火力発電への依存度の高さに驚かされます。

ドイツなどは1990年から再エネを増やす制度を開始しましたが、日本は震災後の2012年、再エネ発電事業者を増やす「FIT(固定価格買取)制度」がスタート、まだ10年程度と開始が遅かったことも火力発電への依存度が高い要因です。制度とは別に、再エネ事業者を増やすための準備も足りていません。

例えば風力発電所の場合、風が強い場所に建てますから、人里離れたエリアが多くなります。そうすると、送電網(電線)が圧倒的に足りないのです。また、九州では電気を使わない春や秋には太陽光発電の電力を「捨てる」出力制御をしているのですが、福岡と山口をつなぐ送電線が細いため、電力を運べません。その点、原子力や火力発電所は準備万端で発電所と同時に送電網も通します。

日本での電力は長らく大規模集中型の地域独占だったので、日本全体で最適化、というよりは地域ごとに最適化してきた歴史があり、地方と地方をつなぐ送電網が弱い。この電力の仕組みを考えると、地域社会に小さな規模で広がりを見せる再エネは、発電所と送電網の最適化が大きな課題となっています。

「私が生徒会に当選したら太陽光を載せます!」が実現

率直に、今の日本の再エネ事情、どうお考えですか?

もっと増やさないといけないけれど、ブレーキがかかっている状態だと思います。政府の目標として、2022年再エネの発電電力量22.7%を、2030年で36〜38%にする。これもかなりハードルが高いのですが、その先2050年では50〜60%という参考値はあるものの、エネルギー政策としての明確な目標値がないことがブレーキの一つ目。原子力をゼロにするのか、10にするのかを決めきれないから再エネを含めた全体の目標値も定まらない。ドイツでは、2012年の段階で2050年までに再エネ電力を80%にすると段階で決めていたのと大違いです。将来像を明確に打ち出せば、マーケットも企業もそれに向かっていきます。

風力発電と太陽光発電

2つ目のブレーキが、「GX推進法案」。カーボンプライシング(炭素への価格付け)という制度や、脱炭素社会に必要な技術開発のための投資支援などを定めた法案で、再エネの事業規律を高める、送電線の整備などが謳われていますが、実は原子力の積極活用などを定めており、「再エネの推進」とは力点が違う。3つ目は、「再エネ」のイメージの悪化です。再エネに関する地域トラブルのニュースも多く、私が2012〜2021年までの10年間、47全国紙・地方紙を調べた結果、「太陽光」「反対」というキーワードで見つかった太陽光発電に関わる地域トラブルは163件にのぼりました。反対理由として、1つ目は土砂崩れや大雨の時などの水害など、自然災害の懸念があること。2つ目は景観。3つ目は自然保護等の観点。4つ目は生活環境への影響です。それらの報道も相まって、再エネのイメージが悪くなっています。

メガソーラー設置時の住民とのコミュニケーションに関しては、経産省のガイドラインはありますが、法律として義務付けられていません。インフラや大規模開発に慣れている事業者は、地域住民との話し合いもしっかりと進めていますが、そうではない事業者は、「法律には違反していない」と住民の同意を得ずに強引に進めてトラブルに発展する。さらにマーケットが大きくなると、「環境問題に関心がある人たち」に寄り添った再エネ事業も、一部の事業者にとっては金儲けの手段となる。これが、太陽光の発電電力量を9.9%に押し上げた要因のひとつでもあるのですが、2012年時点の制度では地権者の同意がいらないなど当時の制度は緩く、住民トラブルを防げなかったのも、準備不足の1つと言えます。

山間部の太陽光発電

イメージ回復のために何が必要でしょうか。

先ほどの「GX推進法案」でも触れましたが、現在国ではコスト効率性と事業規律を高める方向ですので、新しい事業については住民トラブルは回避されることでしょう。ただこれらの規制は、強引な開発を進めてきた事業者に対しては有効だと思うのですが、小規模に再エネに取り組む地域(ご当地)エネルギーへの支援策は不足しています。EUやドイツでは、エナジーコミュニティや地域エネルギー会社の支援制度があります。地域エネルギーは小規模な分コスト効率が低くなるので、その時は買取価格を上げるなどの優遇措置を取るのですが、再エネのイメージを変えるにはすごく大事な措置だと思います。

色々問題も多い再エネですが、地域での成功例も教えてください。

地域エネルギーの政策や事業を拡げる活動が、私のメインの活動になります。まずは、長野県飯田市。環境省がデンマークの地域環境エネルギー事業をヒントに2004年度から開始した「平成のまほろば事業」により誕生した再エネ事業です。地域のNPOを母体として地域エネルギーを推進する「おひさま進歩エネルギー」という会社を立ち上げて、37箇所の幼稚園・地域センターへ2億1500万円の市民出資と環境省の補助金で太陽光を設置しました。

行政は20年間、屋根貸しと固定価格での電気買取で支援し、その売電収益を主に地域が抱える課題に使うことで、市民が主体となり、住みよく便利な地域づくりに貢献しています。その後も事業は拡大し、環境教育や省エネルギー事業も継続。飯田市は環境未来都市にも選ばれました。さらに具体的な支援策を盛り込んだ「再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」を独自に制定して、地域の再エネを活用して地域の課題解決に貢献する事業を増やしています。(※この条例は2013年施行で、初期の屋根貸し事業には関わっておらず、その後の再エネ事業に関わっているので、後ろに回しました。)

再エネの成功と失敗は紙一重。「補助金がなくなったからやめました」などの話もたくさんあるので、10年続くかどうかが勝負だと考えています。その点、飯田市の再エネ事業は20年継続しているので大成功です。 この街で育った中学生の面白い話があります。中学校の生徒会の役員に立候補したその生徒が、「私が当選したら、中学校の屋根に太陽光を載せます!」と宣言して見事当選。その言葉に「おひさま進歩エネルギー」や飯田市の自治区の人たちが協力して、有言実行。本当に太陽光を載せることができました。

都市部の太陽光発電
(写真提供:おひさま進歩エネルギー株式会社)

生徒会と自治区が相談して、太陽光でできた電力を売り、その収益の一部を環境教育や環境イベントに使いました。中学生の発言を実現させる飯田市の大人たちもすごいですし、保育園時代から再エネが身近になったこと、そして環境教育に力を入れてきたことが功を奏したのかもしれません。

再エネとデジタルを組み合わせたビジネスに期待

その一方、創成期は失敗も多かったのではないでしょうか。

20〜10年前は、意識啓発のための回らない風車を作ったり、メンテナンス費用を計上していなかったり、計画の甘さが目立つケースも多く、一部環境省から交付金の返還を求められたケースもあります。最近では自治体が民間企業に任せる方向に舵を切ったので、自治体の失敗は少なくなりましたね。また、風力を建てる計画が頓挫したケースには、場所の選定が甘いなどの問題がありました。風がいいのは山の尾根や海沿い。一方で、信仰の深い山などもありますので、そういう地域にとって大事な場所に風力発電を立てることは避けるべきです。

再エネはビジネスとして成り立つのでしょうか。

再エネの電力は現在、作って売るところまでビジネスになっています。小売ビジネスで言うと、神奈川県小田原。太陽光で電力をつくる「ほうとくエネルギー」が、サッカーチーム・湘南ベルマーレも関わる「湘南電力」を譲り受け、「湘南のでんき」として販売。電気代の1%を子ども食堂の支援など地域貢献や地域の課題解決、湘南ベルマーレのトレーニング施設に寄付しています。

小田原市応援プラン
(出所:湘南電力株式会社 https://shonan-power.co.jp/community_power/odawara.html)

一方、カスタマーである地域の方々は「湘南でんき」を選択することで、地域の課題解決に貢献し、マーケティングにもつながる地産地消型再エネ事業になっています。

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)ン

そのほか、農地と発電のコラボレーションとして、下で農業しながら上で太陽光発電をする、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)も日本で広がりつつあります。海外では、高速道路の遮音壁としての可能性もあるドイツの垂直型太陽光パネルや生物多様性に貢献する再エネ、自然保護団体と協力する市民の憩いの場としての再エネなど、周辺環境も含めて構築する「再エネ」という段階に入っていますので、学ぶことが多いです。日本でも地域や設置場所ごとに考えていくことで、ビジネスへの期待が持てるのではないでしょうか。

農地と発電のコラボレーション

最後に、Y世代にメッセージをお願いします。

再エネに取り組みたいと思うなら、まずは自分で電気について学び、選ぶことが大切です。次に、将来の家選び。戸建て住宅では、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つの効果を取り入れることによって、家庭で使用する年間の「消費エネルギー」量を0(ゼロ)以下にする「ZEHの住まい」が普及しています。それを選ぶことも、省エネに関わる1つの方法。最後に、地域活動などに参加すること。

私は、フランスで始まった気候市民会議をいろんな自治体でやっていきたい。ある地域で無作為抽出した2000人に「わがまちのカーボンニュートラルについて議論しませんか」と参加を促すと、参加するのは約30人ほど。「2050年どんなまちになってほしい?」「どんな消費活動をする?」「ビジネスでできることは?」など、2週間に1度、3時間半、5回みっちりディスカッションし、市に提案します。そういう地域活動の機会があればぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

また、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブがあり、世界や日本の企業が参加している「RE100」というグローバルキャンペーンがあり、Googleやアップルなどがそれに参加しています。中小企業向けには再エネ100宣言RE Actionというキャンペーンもあります。その企業の製品を購入することも、再エネに参加する方法の1つです。

これからのエネルギー問題

でも、僕が一番期待するのは、再エネとデジタルを組み合わせ、新しい発想でビジネスを作ってほしい。再エネにはデジタル化も絡んでいて、発電所や蓄電池、EVなど電力を増やす、貯めることはできるようになりましたが、それを最適化するにはデジタルがないと無理です。ぜひそこは、若い人の知恵に期待したいです。

山下 紀明
山下 紀明
特定非営利活動環境エネルギー政策研究所(ISEP)主任研究員(理事)。1980年大阪生まれ。京都大学地球環境学舎(地球環境学修士)を卒業後、2005年からISEPにて自治体政策を担当。子育てと仕事の両立が目下の課題。京都大学経済学部・武蔵野大学環境学部非常勤講師。2022年度から名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻の社会人向け博士課程(知の共創プログラム)でも研究。共著論考に「どうすればエネルギー転換がうまくいくのか」第1章「太陽光発電の地域トラブルと自治体の対応」(丸山康司との共著)など。
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