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【現地ルポ】プログラミング学習をゲーム機で。真剣に遊び、学ぶ熊本県山鹿市のデジタル人材育成とは(後編)
「Nintendo Switch」を活用した画期的なプログラミング学習「プロジェクトe」を進める熊本県山鹿市立鹿本小学校では、2023年3月に6年生が制作したゲームの発表会が行われた。そこで見えたのは、子どもたちの学びと成長、そして山鹿市がめざす人材育成の方向性だった。卒業を間近に控えた6年生の晴れ舞台を現地取材した。
中川 英明
中川 英明
山鹿市立山鹿小学校 校長
水田 剛
水田 剛
山鹿市立鹿本小学校 校長
中島 賢一
中島 賢一
山鹿創生アドバイザー 熊本eスポーツ協会顧問 福岡eスポーツ協会会長
杉本 一護
杉本 一護
山鹿市立鹿本小学校6年生(取材時)
森嵜 未來
森嵜 未來
山鹿市立鹿本小学校6年生(取材時)

創造力と山鹿愛をカタチに。制作したゲームを発表

「プロジェクトe」の発表会

2023年3月13日。熊本県山鹿市立鹿本小学校で6年生が1年間学んだプログラミング学習「プロジェクトe」の成果となる発表会が行われた。前記事「【現地ルポ】プログラミング学習をゲーム機で。真剣に遊び、学ぶ熊本県山鹿市の人材育成とは(前編)」でも紹介したが、山鹿市が取り組む先進的なプログラミング学習は、「Nintendo Switch」を活用して行う全国初の試みである。

発表会は昨年度に続き今年で2回目となる。鹿本小学校の体育館を会場に、同校の5年生や山鹿市の関係者、各学校の情報教育担当の先生、山鹿創生アドバイザーの中島賢一さんなどを招いて行われた。6年生はこの翌週に卒業式を控えたタイミングといい、まさに集大成となる晴れ舞台であった。

「山鹿の魅力たっぷりのゲームを楽しんでください」と表示されたスクリーン

発表会ではまず、自分たちが「Nintendo Switch」のソフトを使ってどんなゲームを作成したのかをプレゼンし、参加者にその魅力を伝える。プレゼン能力=プロデュース力もプログラミング学習で育まれる大切な要素の一つだ。

ハキハキと発表する子や話にきちんとオチをつけるユニークな子。なかにはちょっと緊張気味の子もいたが、それも微笑ましい。いずれにしても、真剣に、一生懸命に作ったからこその熱意がしっかり伝わってくる。

実際のNintendoSwitchの画面

子どもたちが制作したゲームは、「ふるさと山鹿の魅力を発信しよう」というテーマはあるものの、その内容はさまざまだ。「鹿本小からの挑戦」と銘打たれたクイズやレーシングゲーム。山鹿の特産品を集めて楽しむ「鹿本の町GOGOゲーム」。シューティングゲームやアスレチックゲームを通じて地元の魅力を再発見できる「山鹿再発見ゲーム」などなど、実にバラエティに富んでいる。息を合わせて協力しないとクリアできない2人用のゲームや、一つのゲームの中で簡単・普通・激ムズなど難易度が設定され、初心者から上級者まで楽しめるよう工夫されているものもある。

山鹿の魅力というテーマをもたせることで、子どもたちにとっても自分が生まれ育った町の魅力を改めて知る再発見にもつながったことだろう。だがもし、テーマを決めずに自由に作ったなら、彼らはどんなゲームを作り上げただろうか。子どもたちのさらなる発想力の飛躍を見てみたい衝動にも駆られた。

ゲームを体験。喜びとともに「教える」難しさも

ブースに分かれて好きなゲームを楽しむ子供達

プレゼン終了後は、6つのブースに分かれて参加者が好きなゲームを思い思いに楽しむ時間だ。いざ始まると、体育館はにわかに活気を帯びた。お目当てのゲーム目がけて一目散にブースへ駆け寄ったり、どれにしようか悩んだり。一つのゲームにひたすら熱中する子もいれば、あれもこれもと体験してみる子もいる。皆一様にキラキラと目を輝かせ、心躍っているのが見て取れた。

遊び方を教え合う子供達

そんな5年生に応えて6年生たちも奮闘していた。各ブースとも比較的均等に人だかりができていたが、中には「さあさあ、このゲームおもしろいよ!」と、さらなる呼び込みに精を出す商魂たくましい子もいる。対照的に物静かだが、動作に不具合がないか、きちんとプレイできているかなど細かく注意を払っている子がいて気になった。聞けば、もともとゲームに明るく、制作の中心を担っていた子らしい。

うまくゲームをクリアできない子に問われてヒントを与えていたが、決して話し上手なタイプではないようだった。けれど「どこがわからない?」と問題点を丁寧に聞き出し、順を追って操作方法(解決方法)を伝えようとする様子にはとても感心させられた。

遊び方を教え合う子供達

教えるということは、意外に難しい。教えるためにはそもそも理解度が深くないといけない。そして自分の考えや思いを言語化し、それをいかにわかりやすく伝えるかを考え、行動する。それも「プログラミング学習」で育まれるプログラミング的思考が役に立つ。今の6年生は、昨年の発表会でゲームを楽しむ側にいた子たちだ。それが今年は作る側になり、教えられる側から教える側になった。よく「何かを理解する一番の方法は、それを誰かに教えること」といわれる。教えることは学ぶこと。教えるという経験は、自分たちが学んできたことの反復になり、より理解を深めることになったはずだ。

6年生が作ったゲームの画面

見ているだけではつまらない、と実際にゲームをプレイしてみると、しっかり作り込まれていてやり応えがある。というより、ゲームによってはかなり難易度が高い(そもそも「Nintendo Switch」の操作に慣れていないこともあるが...)。

「それもっと早くにジャンプしなきゃ」「こうやって動かすんですよ」など、6年生だけでなく5年生にもご指導いただいた。それもむなしく、残念ながらゲームクリアとはならなかったが、久しぶりに童心にかえって楽しめた。

「難しいね、このゲーム」

そう伝えると「そうでもないですよ」と笑われたが、その表情はどこか誇らしげでもあった。

発表会を終えた子どもたちは何を感じ、学んだのか

杉本一護(いちご)君

まずは杉本一護(いちご)君。

「発表会はすごく楽しかったです。初めは楽しんでもらえるのか、ゲームに不具合が起きたらどうしようなど不安もあったけど、みんなの『楽しい!』という声も聞けてよかったと思います。卒業前にいい思い出づくりにもなりました」

杉本君はもともと「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」を持っており、自分が作ったゲームをお母さんなどに披露していたそうだ。だが今回は一人ではなく、みんなで協力してゲームを作り上げた。そこには今までにないやりがいがあり、集団で何かをやり遂げることの大切さも学べたと話す。

一番楽しかった部分は?との問いには、「難しかったこと」と、頼もしい答えが返ってきた。具体的には、最初にゲームを作るより、一度作ったあとの改良や修繕の方が難しかったそうで、「何度も繰り返したけど、それも楽しめた」という。壁やハードル、挑戦を楽しめる人間はどの分野でも強い。

それは中川校長が言っていた「トライ&エラーを繰り返す思考」そのものだろう。昨今は何事においても効率化を追求するあまり、一足飛びに結果を求め、ともすれば試行錯誤を「非効率」ととらえてしまうことがある。だが、最適解を求めるための試行錯誤は大切なことであり、そうして壁やハードルを乗り越えた先にある達成感を知らないままだと、何かに挑戦する楽しさもわかりづらいだろう。

杉本君の将来の夢は科学者になることだとか。これまではプログラマーになることを夢見ていたそうだが、「プロジェクトe」を受けて、ものづくりや科学技術に魅力を感じ、夢は変わった。

「科学者になるにもプログラミング的思考は役に立つと思うのでこれからも本を読んだり、ゲームを作ったりしてプログラミング的思考を勉強したいです」

森嵜未來君

続いては森嵜未來君。森嵜くんは充実した達成感を口にした。

「5年生が喜んでくれてうれしかったです。できないこともたくさんあったけど、できたときの達成感は作る側になって初めてわかりました」

作る側になっての気づきは、「プロジェクトe」の狙いでもある。

続けて、「発表会までにできることはやったので、その時点で満足度は100点。発表会ではみんなが思った以上に笑って、楽しんでくれたので最後は120点になりました」とはにかんだ。やるべきことはやったと言えることは試行錯誤を重ねた証であり、何よりの成果だろう。

また、ゲームは少し難易度を高く設定したといい、「これどうやるの?と聞かれることもうれしかった」と話す。

「そういう質問が出るということはゲームをしっかり作り込めた証拠だと思うし、集中してプレイしてくれたということだと思います」

1年間のプログラミング学習を受け、自身の成長について聞くと、「どんなことに対しても物事の裏を想像する力や、試行錯誤して考える力がついた気がします」と答えた。自分でいうのもなんだけど、と言いたげな、少し照れ臭そうな表情を浮かべていたが、しっかりと自分の言葉を紡ごうとしているのが印象的だった。

プレゼンの様子

中川校長の「学んでほしいのは、スキルでなくマインド」という言葉が改めて胸に響く。山鹿市のプログラミング教育、ICT人材育成は、まず思考を育むことをスタートとしている。そこにゲーム機を取り入れたのは、楽しむことに重きを置くからだ。中川校長は言う。

「何か変えられる人は、それを楽しむ人だ」

これからの時代は、変化の激しい時代になるといわれている。AIが進歩することで、これまで人が担ってきた仕事や役割がなくなり、社会が大きく変わることも予想される。そんな時代に必要な人材とは、考える力をもつ人であり、課題を発見し、課題を解決するためのアイデアを生み出す人だろう。そのために主体性のある生き方や、課題の発見や追求を楽しむ思考や習慣を身に着けてほしい。山鹿市のプログラミング学習には、そんなメッセージが込められているように思う。

※Nintendo Switchは任天堂の商標です。
※© Nintendo

中川 英明
中川 英明
山鹿市立山鹿小学校 校長
熊本県山鹿市出身。熊本県内小中学校の教員、熊本県立教育センター指導主事、山鹿市教育委員会指導室長、熊本県玉名教育事務所長等の行政経験を経て、現在に至る。校長歴3校目。「授業で子供を育てる」ことをモットーにし、とことん授業研究に励んだ教諭時代、管理職になっても教育の魂はそこにある。これからの時代、より豊かな人間力が必要となる。その人間力の源は、「ポジティブ、クリエイティブなマインド」、そのマインドは 実体験と考え抜く経験で形成される。昨年度赴任した山鹿小でも、伝統である6年生の「八千代座公演」を継承するとともに、3年生「豊前街道YouTube動画作成」4年生「山鹿総太鼓」5年生「山小コーラス」を新設した。本年度から山小プロジェクトeに挑戦する。
水田 剛
水田 剛
山鹿市立鹿本小学校 校長
熊本県熊本市出身。熊本大学教育学部小学校教員養成課程卒業後、昭和63年4月から教職に就く。主に中学校に勤務、専門は数学教育。平成28年4月より3年間山鹿市教育委員会に勤務。学校教育指導室審議員及び室長を経て、現在に至る。校長歴2校目。教諭時代は生徒に数学の持つ美しさ・よさ、考える楽しさを実感させる授業を追求してきた。
モットーは「失敗と書いて成長と読む」。趣味は陶器(コーヒーカップ)収集、喫茶店巡り、マラソン。熊本県個を生かし集団を育てる学習研究会会員となっており、学生時代に始めたビオラで熊本交響楽団団員として現在も活動中。
中島 賢一
中島 賢一
山鹿創生アドバイザー 熊本eスポーツ協会顧問 福岡eスポーツ協会会長
熊本県山鹿市出身。東京のIT企業を経て、福岡県に入庁。
福岡県にてコンテンツ産業振興を活発に行い、福岡県Rubyコンテンツ産業振興センターを立ち上げ、2013年に福岡市へ移籍。ゲーム・映像係長や創業支援係長として、ビジネス支援に奔走。 その後、公益財団法人福岡アジア都市研究所にて都市政策をベースとした研究事業のコーディネータとして活動し、在職中に2018年9月に福岡eスポーツ協会を立ち上げ、同時に熊本eスポーツ協会顧問に就任する。2019年4月『楽しい』でもっと世の中を良くしようとNTT西日本に移籍。プライベートでは、17年以上にわたってトレーディングカードゲームのイベントを開催し、子どもたちからデュエルマスターと称されている。
杉本 一護
杉本 一護
山鹿市立鹿本小学校6年生(取材時)
森嵜 未來
森嵜 未來
山鹿市立鹿本小学校6年生(取材時)
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