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「副」業ではなく「複」業で。パラレルキャリアによって自己実現と社会貢献を叶える時代へ
人生100年を生きる新時代の働き方として注目されている「パラレルキャリア」。自分の持つ能力を複数のプロジェクトで活かすという考え方だ。「副業」とはどう違うのか、一般的に認知度を高めるためには、何が必要なのか。実際に京都市内から福知山に移住し、パラレルキャリア推進と人材育成に携わっている、福知山公立大学地域経営学部准教授の杉岡秀紀さんに、お話を伺った。
杉岡 秀紀
杉岡 秀紀
福知山公立大学地域経営学部准教授
大阪公立大学大学院都市経営研究科非常勤講師(兼職)

副収入より社会貢献や自己実現に軸を置くのが「パラレルキャリア」

コロナ禍もあり、ここ数年は「働き方」そのものが大きく変わっていることを感じます。そのなかで、副業に関しては、いつごろからどのような変化があったのでしょうか。

杉岡秀紀さん

近年の副業のイメージの変化には、大きく分けて3つ背景があると思います。一つは2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。いわゆる「働き方改革」と呼ばれるもので、ここで厚生労働省のモデル就業規則が180度変わりました。それまで原則「副業禁止」とされていたのが、2018年から「容認する」となったのです。一つの人生を一つの会社で終わるのではなく、複数の役割という意味で「複役社会」に持っていこうと政府レベルで押し出したわけです。これはかなり思い切った政策転換でした。
このあとやってきたのが2020年からのコロナ禍です。コロナで失われたものは計りしれませんが、パラレルキャリアという観点では、相当進んだというのが実感です。密にならないよう、オンラインツールを多くの人が使うようになりました。どこからでもコミュニケーションできるよう、世の中のパソコンリテラシーが一気に上がったのは大きかったですね。自由に場所を選ぶ働き方も「ワーケーション」「リモートワーク」などの言葉で一気に普及していきました。

平均寿命の推移と将来設計

(出典:内閣府『平成29年版高齢社会白書』3-高齢化の要因)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html

人生100年時代になったことも大きいですね。特に日本は世界一の長寿国で、現在の平均寿命は、男性は81歳、女性は88歳です。これまでの20世紀の学び方、働き方は、20代前後で教育を終え、その後は従業員として一つの会社で働いて、60歳くらいで定年、そして老後というのが王道だったと思います。それが100年の人生を見据えて、途中で2つ3つ「リスキリング(学び直し)」をする人が増えるようになりました。

様々な働き方

多くの社会人の方が、不確実なこの時代を生き抜くためには、これまで学んだ知識だけではやっていけないと気付いている。そして常に学び直し、仕事に活かそうとしています。本業をやめるのはリスクが高いし、オンラインで授業を受けることができるので、働きながら学ぶのが当たり前のようになってきています。

「副業」と「パラレルキャリア」とはどう違うのでしょうか。

近年の副業のイメージの変化には、大きく分けて3つ背景があると思います。一つは2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。いわゆる「働き方改革」と呼ばれるもので、ここで厚生労働省のモデル就業規則が180度変わりました。それまで原則「副業禁止」とされていたのが、2018年から「容認する」となったのです。一つの人生を一つの会社で終わるのではなく、複数の役割という意味で「複役社会」に持っていこうと政府レベルで押し出したわけです。これはかなり思い切った政策転換でした。
このあとやってきたのが2020年からのコロナ禍です。コロナで失われたものは計りしれませんが、パラレルキャリアという観点では、相当進んだというのが実感です。密にならないよう、オンラインツールを多くの人が使うようになりました。どこからでもコミュニケーションできるよう、世の中のパソコンリテラシーが一気に上がったのは大きかったですね。自由に場所を選ぶ働き方も「ワーケーション」「リモートワーク」などの言葉で一気に普及していきました。

副業と複業の違い

(出典:『日経COMEMO』複業研究家・西村創一朗氏の投稿)
https://comemo.nikkei.com/n/n7d2fb1592400

「副業」に比べて「複業」の概念はとても広いです。無償で行うボランティアや、プロボノ(本業の仕事以外で職業上の専門性を生かし、公益活動に無償で携わる活動)のほかに、目的は自己実現や社会貢献だとしても、しっかりとお金はもらうパターンもあります。まだまだ境界線は曖昧ですね。

なるほど、一番の違いは、パーパス(お金以外の目的・意図)があるかどうかなのですね。

公務員だからこそ複業に向いている。自治体の積極的な取り組み

最近では、地方自治体が人材育成で「複業」を取り入れているといいます。杉岡さんが注目されている取り組みを教えてください。

島根県海士町は、日本で初めて新時代の働き方として『半官半X』という役場職員を募集しました。公務員(官)として役場の業務に従事するだけでなく、自分の「好き」や「得意」を地域に還元する働き方(X)ができる、というのが採用条件です。「公務員は副業をしてはいけない」ではなく「公務員こそ、しっかり社会貢献と自己実現を想定した副業をする意欲が必要」という考え方ですね。公務員はおかたいイメージがありますが、これはとてもインパクトのある事例でした。公務員自身が地域に飛び出し、有償で地域活動などを認めていく。今後こういった公務員採用が増えていくと思います。

海士町がやってみた暮らしとつながる働き方

外部の方を役所で受け入れるケースもあります。京都府宮津市の「副業・兼業人材活躍プログラム」では、2021年、民間から3名の募集を行ったところ546名もの応募が集まりました。大手広告代理店やスポーツメーカー勤務など、人材も豊富で、結果3名に絞りきれず、7名採用したそうですが、民間に「自治体や社会のために貢献したい人がいませんか」と旗を上げると、手を挙げる人が100倍いるということですよね。

宮津市の副業・兼業人材活躍プログラム

応募する方は、社会貢献欲求はもちろん、セカンドキャリアも想定していると思います。自分の力がどこまで通じるか、次につながる実験値になりますから。
そして地域としても、こういった外部または民間の人材が入ることで、自治体のお役所的な思考や働き方、コミュニケーションが大幅に変わるメリットがあります。宮津市には天橋立という観光資源がありますが、地域住民じゃないからこそ出てくるファンを増やすアイデアもたくさんあるはずです。
人は「聞く」だけでは変わりません。「視点」を変えなければ。いわば文化を変える力が、「複業」にはあると私は思っています。

これから複業をやってみたいという方も多いと思います。始める前に、注意をすべき点はありますか。

一番は就業規則ですね。まずはご自身が所属されている会社の就業規則をチェックしておかないと処分の対象になってしまいます。というのも、働き方改革によりモデル定款が副(複)業「禁止」から「推奨」に変わったとはいえ、会社自体の就業規則は変わっていないケースはまだまだ多いです。大企業は変わり始めているのですが、日本の99.7%を占める中小企業の多くが、まだ消極的なのが実情です。
情報漏えいのリスクや、労働時間の管理や把握の難しさ。余暇を削り複業をすることで、身体的な疲れやストレスが溜まり、本業がおろそかになるのではないかという心配もあるでしょう。2021年に発表されたデータによると、副業を容認する企業は55%。半分を超えてはいますが、言い方を変えれば、"まだ"半分です。日本は終身雇用や年功序列が根強く、今が過渡期といえるでしょう。

パーソル総合研究所 『第二回 副業の実態・意識に関する定量調査』

(出典:パーソル総合研究所 『第二回 副業の実態・意識に関する定量調査』)
https://rc.persol-group.co.jp/news/202108111000.html

同調圧力を超えるためには「制度」より「風土」が重要

過渡期を超えるため、パラレルキャリアが普及していくには何が必要なのでしょう。

副業を普及していくために必要なのは、「制度」ではなく「風土」だと思っています。超えるべき最後の壁は「同調圧力」と思っています。要は、世間のどちらがマジョリティかというのが大きく影響しているんですね。政府が2017年に行った就業構図基本調査によると、副(複)業人口は260万人弱、これは労働人口の4~5%、20人に1人くらいです。今はコロナの影響もあり、感覚値的に、その倍は副業人数がいると思いますが、それでもまだ少数派です。

家庭を守り、キャリアも守る

ということは、今はまだ副(複)業をしている人はマイノリティで、同調圧力はしないほうに働きます。副(複)業が普及するには、マジョリティに変わるのを待たねばなりません。

パラレルキャリアが「同調圧力」のキャズムを超える必要があるんですね。日本の多くを占める中小企業が、率先して複業を推進していけば、一気にマジョリティになるのではないでしょうか。

その通りです。例えば、京都北都信用金庫は副(複)業を解禁しています。メガバングではなく、こういった地元金融機関のケースが増えれば、銀行は様々なネットワークがありますから、大きな影響力を持つ気がしています。
また、京都北部では、「team.m」という取り組みが注目されています。家庭を守りながら空き時間に自分のスキルを活かしたいという起業経験をお持ちのママやパパと、特化した部分や能力を欲している企業側のニーズをマッチングするものです。これを大企業の人材派遣会社ではなく、NPOがやってらっしゃるんですよね。こういった取り組みが広がってきているのを見ると、私は案外、同調圧力の突破口は、中小企業ではなく地域の働きたいママやパパが開いてくれるんじゃないかと期待しています。

team.mの取り組み

また、私の住む福知山では、農業など一時的に労働力が必要な仕事が結構あるんです。今までは地域で頑張ってきたのが、高齢化でどうにもならなくなってきているケースは多いので、隠れたニーズがあると思います。地域に移住する最大の課題は、仕事です。だからまず、パラレルキャリアを通じて地域に入っていくのもいいと思います

「副業」は「moonlighting」。
でもこれからの「複業」は「Sunlight」であるべき

温かい社会を作り、みんなが暮らしやすく

高齢化社会で労働人口が減っていくこれからは、一人が倍の時間働くのではなく、家庭も大事にするし、地域も大事にする。そして仕事も大事にすることが可能な時代になるべきです。ただ、それには、個人が能力を伸ばすだけではなくて、周りが温かく見守っていける社会になることが大切です。副業ではないのですが、大手の企業が、一度退職した社員の方をもう一度出戻りで受け入れ始めています。その人が一度飛び出して得たスキルを、「戻ってきて自社に還元してください」とポジティブにキャリアパスを行うのは、非常に注目すべきキャリアの変化だと思っています。

「副業」を英語に訳すと「moonlighting」ですが、「パラレルキャリア(複業)」のイメージは太陽に隠れる月明かりではなく、「Sunlight」に近い。人を輝かせ、地域や社会も明るくして、自分もより輝く、という風に、二重三重にメリットを享受していく――。それがひいては、人生100年時代の生きる武器になり、いい社会を作っていくことになると思います。

杉岡 秀紀
杉岡 秀紀
同志社大学経済学部卒業、同志社大学大学院総合政策科学研究科修了。専門は公共政策、地方自治。まちづくりNPOきゅうたなべ俱楽部代表、内閣官房行政改革推進本部事務局参事官付、京都府立大学公共政策学部講師を経て、2016年から現職。
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